言語聴覚士の視点から見た ― 神経発達症のある子どもの親支援が必要な5つの理由 ―
- 佐藤俊彦

- 11月7日
- 読了時間: 3分
① 家庭こそが「ことばの発達の原点」
ことばは、特別な訓練ではなく、毎日の関わりの中で育ちます。食卓での会話、遊びのやりとり、寝る前のひとこと――その一つひとつが、お子さんの「話したい」「伝えたい」という力を育てます。言語聴覚士は、家庭での関わり方を一緒に整えながら、日常そのものを“発達の時間”に変えていきます。
② お父さん・お母さんの理解が、子どもの安心をつくる
神経発達症のある子どもは、自分の気持ちを言葉で伝えることが難しいことがあります。「言うことを聞かない」のではなく、「伝え方がわからない」ことも多いのです。言語聴覚士は、お子さんの行動の背景を丁寧に読み取りながら、「この反応には意味がある」と気づけるようサポートします。その理解が、親子の安心の土台になります。
③ 「叱る」から「伝える」へ――親子の会話が変わる
「どうして伝わらないの?」と感じる日々は、誰にでもあります。でも、関わり方を少し変えるだけで、子どもの目の表情、声のトーン、言葉の出方が変わっていきます。言語聴覚士は、お父さん・お母さんが「伝わった!」と実感できる瞬間を一緒に見つけ、小さな“できた”を積み重ねながら、親子の会話をあたたかく育てていきます。
④ 支援がつながると、子どもの成長が加速する
園・学校・家庭の関わり方がバラバラだと、子どもは混乱してしまいます。言語聴覚士は、保護者と一緒に「ことば・行動・気持ち」の見立てを共有し、支援者や先生たちとの橋渡しを行います。家庭と支援が同じ方向を向くことで、発達の流れが安定し、変化がより早く、確かなものになります。
⑤ 親の笑顔が、子どものことばを引き出す
お父さん・お母さんが「大丈夫」「ゆっくりでいい」と思えるようになると、その安心感が子どもに伝わります。焦りが少なくなり、笑顔で見守れる時間が増えると、子どもは“ことばを出す勇気”を取り戻します。言語聴覚士の親支援は、「がんばりすぎない関わり」を見つけるための伴走です。親が笑顔になると、子どもの世界もやさしく変わります。
💬 言語聴覚士からのメッセージ
子どもの「ことば」は、親のまなざしと安心の中で育ちます。私はこれまで、病院・大学・療育の現場で数多くの親子と関わり、「ことばが出ない」から「伝わった!」へ変わる瞬間を何度も見てきました。
その変化のきっかけは、決して難しいトレーニングではありません。お父さん・お母さんの“関わり方”が少し変わっただけで、子どもの目が変わり、声が変わり、笑顔が増えていく――その力を、私は信じています。
焦らず、比べず、一歩ずつ。言葉が芽吹くその瞬間を、いっしょに見届けていきましょう。




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